1. 最初の成功と「Garbage In, Garbage Out」の教訓
「ネジゲージ管理システム」のリリースと、現場への操作説明が完了しました。 写真登録や新規追加の手順をレクチャーし、自分たちの業務がアプリ上で回る感覚を掴んでもらう——これは単なる機能説明ではなく、当社における**「自社データベース化の第一歩(オンボーディング)」**でした。
なぜ、こうしたシンプルなシステムから始めたのか。 それは、システム運用において最も重要なのが**「全社員の参画とデータ精度の確保(Data Integrity)」だからです。 ITの世界には「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れればゴミしか出てこない)」という言葉があります。どんなに優れたシステムでも、入力される在庫数や単価、図面情報が間違っていれば、出力される結果は無価値です。 まずはゲージ管理という「失敗しても致命傷にならない業務」を通じて、正しい情報を入力し共有するという「データ・リテラシー」**を養ってもらうことが、本丸への必須条件でした。
2. いざ本丸へ:販売管理システム開発のロードマップ
基礎固めを終え、いよいよメインとなる「業務用販売管理システム」の構築に着手します。 ここで私が弾き出した開発期間は、**「稼働まで1~2年、定着・完成まで最大3年」**という長期スパンでした。
なぜこれほどの期間が必要なのか。その理由は複合的です。
- スキル習得の学習曲線(ラーニングカーブ): FileMakerの知識ほぼゼロからのスタート。
- リソースの制約: 通常業務をこなしつつ、たった一人でのワンマン開発。
- 要件の複雑性: 「部品商社(仕入・販売)」と「製造業(設計・組立)」という、実質2社分の異なる業務ロジックを統合する必要がある。
- アジャイルなプロセス: ルールを決め、作り、使い、直すという試行錯誤(トライ&エラー)を繰り返しながら進めるため。
さらに、膨大な部品マスター(図面、仕入・販売単価など)のデータ移行や整備も並行して行う必要があります。 「3年」という数字は、これら全ての泥臭い作業を含めた、現実的な**「完全稼働(フルオペレーション)」**までの目標値でした。
3. 「見えない予算」と経営層の理解
外部ベンダーに発注する場合の「予算」は「金銭」ですが、内製化における予算とは**「時間(人件費)」**です。 経営者に対して「成果が出るまで3年待ってくれ」と言うのは、通常であれば難色を示される提案でしょう。
ここに、多くの企業でDXが頓挫する原因があります。 **「経営層(予算管理者)と現場(実行者)の認識ギャップ」**です。 「IT化すればすぐに魔法のように便利になる」と考える上層部と、「業務プロセスの整理やデータ整備にこそ時間がかかる」と知っている現場。この見積もりの乖離(ズレ)が、後の不満やプロジェクトの失敗を生みます。
成功には、経営層がシステム化の本質——**「単なるツールの導入ではなく、業務そのものの再構築である」**こと——を理解し、そのコスト(時間)を許容する度量が必要です。
4. 10名以下の強み:「平和的独裁」による推進
企業規模が大きくなればなるほど、この「予算と成果のギャップ」による政治的な摩擦は避けられません。 しかし、幸いにも当社は10名以下の小規模組織。 トップである社長と、開発責任者である私(部長)の距離が近く、信頼関係ベースで物事を進められる環境にありました。
社長の決断のもと、全権を私に委任してもらう——言葉を選ばずに言えば**「平和的な独裁」、あるいは「強力なリーダーシップ」**によって、この3年計画は承認されました。 「独断かつ強引に」ではなく、あくまで「組織の未来のために」。 こうして、長いようで短い3年間の「孤独で熱い開発の日々」が幕を開けたのです。
(続く)
【編集協力】 このプロジェクト記録の文章表現は、Gemini(Google AI)による構成案の作成および校正支援を受けています。