1. 外部委託の限界:コミュニケーション・コストの増大
補助金審査を通過し、システム開発業者(ベンダー)との詳細な打ち合わせが進むにつれ、経営者である社長と私の間には、ある種の「精神的疲労感」が漂い始めていました。
それは、**「業務を知らないシステム開発者」と「システム開発を知らない発注者(私たち)」**という、埋めがたい溝に起因するものでした。 自分の担当業務については説明できても、他部門の細かい手順や例外処理(イレギュラー対応)までは網羅できません。 「このまま発注しても、顧客ごとに異なる複雑な業務フローに対応できないシステムが出来上がるのではないか?」 「機能不足が発覚するたびに、追加開発費(コスト)が発生し、結局Excelとの二重管理に戻るのではないか?」
他人に依存して「最初から100点満点の完成品(大きなシステム)」を求めること自体に、構造的な無理があると痛感しました。
2. 重い決断:「第3案」への舵切り
残された道は、私自身も「技術的に未知数」と評価していた第3案——FileMakerによる完全内製化です。 「小さなもの(未完成品)」からスタートし、走りながら育てていくアジャイルなアプローチ。しかし、それは開発担当となる私への負担と、プロジェクト失敗のリスクを社内だけで負うことを意味します。
補助金事業の完了期限(年内の支払い)が迫る中、最終的なジャッジを下したのは社長でした。
「第3案で行こう。自社で作る。」
それは、私の提案(意向)を採用したと同時に、トップとして「結果責任」を引き受けるという重い決断でした。この瞬間、当社のDXプロジェクトは「外部依存」から「自律型組織」へと大きく方針転換しました。
3. 新たなプロジェクト計画とコスト削減
方針決定に伴い、役割分担とロードマップが再定義されました。
- システム構築・サーバー管理者: 私(担当者)
- 商品マスター登録・運用設計: 社長(現場リーダー)
- 運用体制: 全社員が参画し、フィードバックを行う
また、外部委託費が消滅したことで、総予算は当初申請額の約10分の1にまで圧縮されました。補助金事務局への減額申請が必要になりますが、初期投資(イニシャルコスト)を劇的に抑えられたことは、開発者としての私のプレッシャーを大きく軽減してくれました。
4. サーバー選定の壁:「クラウド」か「オンプレミス」か
ソフトウェアはFileMakerで決まりましたが、最後の未知領域は「データベースサーバー」でした。 調査の結果、選択肢は2つ。
- クラウド(AWS等): 運用管理が楽でセキュアだが、従量課金制(ランニングコスト増)。
- オンプレミス(自社設置): 初期費用のみで済むが、構築・管理の手間がかかる。
今回は「補助金で初期投資を賄いたい」という事情と、ランニングコストを抑えたい意図から、自社内にサーバーを置くオンプレミス構成を選択しました。
5. 常識破りの選択? サーバー機に「Mac mini」を採用
では、具体的にどのハードウェアを買えばいいのか。 Windows一筋で生きてきた私が選んだのは、まさかの**「Mac mini(2台構成)」**でした。 一般的なWindows Server機ではなく、Macを選んだ理由は以下の通りです。
- 省スペース&高耐久: アルミボディで放熱性が高く、サーバーラックがなくても置き場所に困らないコンパクトさ。
- 親和性(Appleエコシステム): FileMaker自体がAppleの子会社(Claris)製品であり、iOSデバイス(iPad/iPhone)との相性やOSレベルでの安定性に期待。
- 開発機としての転用: 1台を「本番稼働用」、もう1台を「開発・検証用(兼バックアップ)」とする2台体制にしました。万が一計画が頓挫しても、高性能なPCとして他用途に潰しが効く(そして個人的にMacを使ってみたかった!)。
こうして、Mac mini 2台、iPad 5台、Apple Pencil、プリンターという、シンプルかつ柔軟な「自社開発インフラ」が確定しました。
次回、いよいよ機材が到着。未経験の「サーバー構築」と「アプリ開発」の実装フェーズが始まります。
(次回へ続く)
【編集協力】 このプロジェクト記録の文章表現は、Gemini(Google AI)による構成案の作成および校正支援を受けています。