Vol.3 ~第3の選択肢とPoC~  

【自社開発DX】FileMakerで実現した「小さく始めて大きく育てる」販売管理システム刷新プロジェクト

1. 「大穴」だった第3の選択肢:内製化への憧れと懸念

パッケージ導入も外部委託も暗礁に乗り上げる中、当初から検討リストの末席にあった「第3案:データベースの内製化(自社開発)」が浮上してきました。

かつて当社には、Microsoft Accessで構築された小売事業部用のシステムが存在しましたが、開発者が不在となった現在、その中身は誰も触れない「ブラックボックス」と化しています。 この苦い経験から、社内の大半は「素人の自社開発など無謀だ」という認識でした。まさに、実現可能性の低い「大穴(ギャンブル)」扱いです。

しかし、私の心中にはある確信めいた思いがありました。 「未完成でもいい。業務の変化に合わせて自分たちで育てていけるシステムこそが、最終的なROI(投資対効果)と満足度を最大化するのではないか?」

2. FileMakerとの出会いと「モバイルファースト」の衝撃

情報収集を進める中で、定番のAccessとは異なる**「Claris FileMaker」というプラットフォームに出会いました。 Appleの子会社(当時)が開発するこのツールは、直感的なUI/UXデザインが可能で、何より「iPadやiPhone(iOSデバイス)で動作するネイティブアプリが作れる」**という点に強烈な可能性を感じました。

  • デスクに縛られない: 事務所のPCだけでなく、在庫棚や製造現場でも参照・入力が可能。
  • 直感的な操作性: キーボード入力が苦手な現場スタッフでも、スマホ感覚でタップ操作できる。

これは単なる「事務処理ソフト」ではなく、現場のワークスタイルそのものを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)の切り札になる予感がしました。

3. まずは動かしてみる:45日間のPoC(概念実証)

実績ゼロの状態で社内決裁(稟議)を通すには、言葉だけでなく「動くモノ」を見せる必要があります。私はFileMakerの「45日間無料評価版」をインストールし、プロトタイピングに着手しました。

データベースの正規化などの専門知識はこの時点で皆無でしたが、プレゼン資料を作るような感覚で画面レイアウトを作成。 実際に自分がデザインしたメニュー画面をiPadに転送し、タップして画面が切り替わった瞬間——。

「iPadで、自分の作ったアプリが動いている!」

その感動は言葉にできないものでした。この成功体験が、「これなら理想のシステムが作れる」という根拠のない、しかし確固たる自信へと変わった瞬間でした。

4. 概算見積もりの算出:ライセンスとインフラの壁

補助金申請のため、具体的な構成と予算(お買い物リスト)を策定する必要がありました。

ソフトウェア・ライセンス

FileMakerのライセンス体系は「ユーザーライセンス(年間契約)」が企業利用のスタンダードです。 開発者である私を含め、最低ラインの5名分で契約。これならサーバー用ソフトも付属し、常に最新版を利用できます。

  • 予算: 約9.6万円/年(5ユーザー)

クライアント端末(ハードウェア)

「現場での活用」を前提とするため、iPadを人数分の5台計上。さらに、Apple Pencilを2本追加しました。 これは、発注図面の余白に手書きで行っていた「形状指示のスケッチ」をデジタル化するための施策です。発注担当者がタブレットに直接描画できれば、ペーパーレス化と情報の蓄積が同時に実現できると考えました。

サーバー・インフラ(オンプレミス)

最大の難関は「サーバー」の選定でした。 当時の私の知識レベルは、「みんなのデータを保存する箱(HDDのすごい版)」程度。Windows ServerなどのサーバーOSが必要なのか、バックアップはどうするのか、スペック選定の基準も皆無でした。 正確な構成を決める知識がなかったため、一旦は小型のサーバー機として約40万円を計上。「後で詳しく調べて正式決定しよう」という、見切り発車に近い状態です。

周辺機器

現場から直接帳票を出力できるよう、AirPrint対応(想定)のプリンターもリストアップ。

これらを合計し、補助金申請のための概算予算は約70万円。数百万〜一千万円規模の外部委託に比べれば破格ですが、それでも「海のものとも山のものともつかぬ自社開発」に投じる額としては、決して小さくありません。

5. 孤軍奮闘のスタートライン

私の中では「大穴」から「本命」へと昇格した第3案。 iPadで動くプロトタイプという武器と、手探りの見積書を手にしましたが、周囲から見れば依然として**「無謀かつ突飛な計画」**に過ぎません。

社内の懐疑的な視線をどう覆し、プロジェクトを承認させるのか。私の「熱意」と「現実」の戦いはここからが本番でした。

(次回へ続く)

【編集協力】 このプロジェクト記録の文章表現は、Gemini(Google AI)による構成案の作成および校正支援を受けています。

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